森羅万象の旅日記 



12.風水都市 松本 U

風水の基本的な考え方は自然と人間との共生なのです。共生というと、建築家の黒川紀章氏が、カザフスタンの新首都の国際設計コンペで一位になりました。えーっ日本がなぜ一位なんだ、と各国の関係者は思ったそうです。

というのは、ロシアやドイツ、アメリカはこのコンペを大変重要視していて相当力を入れていました。なぜならカザフスタンには、世界の石油埋蔵量の二割が眠るといわれているからです。

そこに2030年をめどに人口100万人の新首都「アスタナ」を作ろうというものです。ポスト中近東を目指す各国が乗り気にならない訳がありません。

このコンペにおける黒川氏のコンセプトは共生、「生命の原理」だったのです。ここには昔の古い町並みも残っています。それらを壊さないで、共に発展する都市を作るというものです。こういうテーマを出したのは黒川氏だけでした。

二十世紀はスクラップ、アンド、ビルド、の時代だったと思います。しかし二十一世紀は調和、再生の時代となるでしょう。物事を一方向だけから見るのではなく、反対方向からも見る事が必要なのです。これは風水でいう陰陽なのです。

よく、性格の不一致でわかれました、などという言葉を聞きますが、不一致であたりまえじゃないですか。性格の違うもの、つまり陰と陽が調和するから新しい可能性ができて面白いのではないでしょうか。

街にも同じことが言えると思います。たとえば筑波学園都市などはよく整備された街ですが、もう少し混沌とした場所があってもいいですね。たとえば、赤ちようちん横丁とか、市場街のような。新宿も吉祥寺も、そういう場所はいつも人があふれていて活気があります。

松本は、この古いものと新しいものが上手く調和している街だと思います。古い建物を単に残すのではなく、見事に使い切っています。それと、まわりを取り囲む山々と河川との取り合いが実に良いのです。   

松本は経度から見ると、北海道と九州のちょうど真中のゾーンに入ります。日本の屋根といわれるアルプスもこのゾーンに属します。松本の東側には、北から南にかけて、大洞山、戸谷峰、美ヶ原、高ボッチ、と連なる山並みが青龍砂(せいりゅうさ)を形成しています。

「砂」とは風水用語で山とか山並みのことです。そして西側には、常念岳、蝶ヶ岳、黒沢山から烏帽子岳が白虎砂(びゃっこさ)を形作っています。この二つの砂(さ)があたかも両手で包み込むように街を囲んでいるのです。

そして穂高連峰の山々からの良質な「気」を携えた梓川が松本に向かって東進し、手前で大きく迂回して北上しています。風水では川流が「気」を運ぶとされています。

また、美ヶ原高原を源とする女鳥羽川が市内を縦貫し、美しい町並みを造ると同時に街に良い「気」をもたらせています。さらに中心街から見て北の方角に国宝松本城があります。

松本城は日本では珍しい烏城です。風水では北は玄武、その守護色は黒、そして八卦(はっか)で北は「坎」これは水を表します。黒い烏城とそれを取り囲む外堀の水、街の要としてこれ以上の物はありません。   

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